「栄村TV」のJANIS、地デジのIP送信に意欲
インターネット接続サービスを手掛ける長野県協同電算(JANIS、長野市)は地上デジタル放送のハイビジョン(HD)番組をインターネットプロトコル(IP)で、ADSL(非対称デジタル加入者線)によって難視聴世帯に伝送する構想をまとめた。ワンセグ放送で採用されている画像圧縮技術「H.264」を活用。伝送するデータ量を抑えることで、高速大容量通信が可能な光ファイバーの敷設が困難な地域でも、既存のADSLでHD映像を視聴できるようにする。
JANISの佐藤千明ネットワーク部長=写真=は19日、日経BP社の専門誌「日経ニューメディア」主催のセミナーで、地上デジタル放送のIPマルチキャスト構想を推進する方針を表明。「放送局側で(番組の)ソースを『H.264』の映像にエンコード(符号化)する協力態勢を得たい」と述べ、テレビ局の協力を求める考えを示した。画像圧縮技術「MPEG2」の映像を地上デジタル放送で受信して、さらに「H.264」で圧縮すると画質が劣化すると見ており、放送局側に「H.264」の映像提供を求めていく。
同社は長野県栄村で地上アナログ放送のIP送信実験を手掛けている。地元の民放が再送信に同意していないため、実験を事業化できないが、2006年度内には実験対象を栄村秋山地区の全戸(160戸)に広げる方針だ。地上デジタル放送のIP再送信構想はアナログ放送の実験で蓄積したノウハウを活用することになるが、地元テレビ局の協力が得られるかなど不透明な部分も多い。
地上デジタル放送の普及をめぐって、日本民間放送連盟は放送波が届かない地域への補完としてIP配信を活用することを容認。著作権問題では、文化審議会法制問題小委がIPマルチキャスト放送の同時再送信を著作権上、有線放送と同じ扱いにする方針を示したため、佐藤部長は「アナログ放送のIPマルチキャスト再送信問題は事実上決着した。このまま粛々と(実験を)続ける」と強調している。
NTTは2010年までに固定電話加入者の半数となる3000万世帯・事業所を光回線にする計画を打ち出している。JANISは秋山地区のような採算性の低い地域に光ファイバーが敷設され、地上デジタル放送のIP再送信が実現する可能性は高くないと見ており、既存技術のADSLを活用したIP再送信の事業化を目指す構えだ。
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