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メディアラボの目 ネットの言葉は「落書き」か

インターネット調査は特定の商品を購入した人を探し出して、消費者がどんな感想を抱いたかなどを調べる目的で普及した。有権者の意向をネットで探る「民意のマーケティング」についても「特定の層にターゲットを絞り込んで、政策についての意向を探る目的では有効な手段になる可能性がある」(ネットリサーチ総合研究所の朝倉康文研究員)と専門家は指摘する。

例えば、都市部で生活する身体障害者、郊外から通勤するパート労働者など特定の層に福祉や雇用対策についての民意を探るといった使い方も考えられる。本来ならば選挙の戦況把握よりも、マニフェスト(政権公約)という政党にとっての「目玉商品」の企画段階でネット調査を活用する方が有効かも知れない。

ネット調査の市場は2年前、120億円規模に過ぎなかったが、ネットの普及に伴い拡大基調が続き、2年後の07年度には500億円規模になるとの試算がある。ネット調査会社は新興企業が多かったが、定性調査の領域では電通など大手の参入事例も出てきており、市場拡大は加速しそうだ。

電通のパートナー企業となったガーラはライブドアとも提携して、ネットユーザーの考えていることをマイニング(採掘)するビジネスをブログの分野にも広げる。米ダウ・ジョーンズと英ロイターが共同出資するファクティバダウジョーンズ&ロイターも「電通バズリサーチ」と類似のサービスを展開しようとしている。

アンケートに答えてもらい、消費者や有権者の意向を探る手法は質問の設定次第で調査結果がぶれる可能もある。一方、電通などが手掛ける定性調査の領域はネットという限定された世界とはいえ、本音で語られている言葉から消費者の意向を探ろうとする試みであり、メディアから見ても興味深い。

インターネットに書き込まれる言葉は「便所の落書き」に例えられることが多く、価値の低いものとされてきた。ただ、落書きが世相を映すことは、建武の新政における混乱を風刺した『二条河原の落書』などの例もある。ウェブで語られる言葉をマイニングすることで世相を読み解くノウハウが蓄積できれば、過去のウェブ情報を蓄積する作業に歴史的な価値を見出すことができるかもしれない。

米国ではウェブを勝手に保存する「ウェイバック・マシーン」というシステムが登場して物議を醸したことがあった。日本でも国立国会図書館が情報源を選択しながらウェブ情報のアーカイブ(記録資料)化に取り組んでいる。ウェブで語られる膨大な量の言葉から金鉱を採掘できるのか。「便所の落書き」が「宝の山」になると気づき始めた人たちの挑戦は始まったばかりだ。

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